【シュラブを誘引? カット? その違い】

昨今すっかり主流になった『切ってもOK、誘引してもOK』というシュラブローズ。
ティストウの庭では、基本的に結構ガッツリ切ってます。
一番の理由は、そもそもに誘引出来る壁や構造物が限られてるからなんですが、その他にも理由がありまして。

①その品種特有の樹姿を自立樹形で楽しみたいから。
②誘引等の高所作業が重労働。花殻摘みもチョー大変。
③出来る限り長い期間、最盛期を保ちたい。

①と②はともかく、③は『…え?』って感じかもしれません。一般に『枝を横倒しに誘引すると花が沢山咲く』と言われていますから、誘引したほうがより多くの花を長く楽しめそうな・・・・・けど実際は単純にそうとは言い切れないと感じています。
例えば「シュラブローズを誘引してみたけど、さほど花数が増えたって実感はなかった…」って方、ケッコー多いんじゃないかなと。私自身、いろんな品種でいろんな風に何度も試してみて、結果そう思いましたので。

という訳で現時点での、うちの考え方は、
誘引しようがカットしようが一株が咲かせられる花数は結局同じ。
もちろん敢えてにワザワザ実験して花数を数えた訳じゃありませんけど、その株の体力(或いは根っこの生育状態)という視点から考えればあながち外れてもいないんじゃないかと。少なくとも・・・シュラブを切り詰めたせいで花数が減った(株が弱った)って体験は無いです。
その上で、⇦の株の枝を、誘引(横倒し)した場合とカットした場合で咲き方を比べてみたのが⇩の図です。

 





・・・伝わりました? 解かり易くするためにかなり単純化してますが、

・横倒しに誘引すれば花は枝にひとつずつ並んで咲く
・低くカットすれば大きな房になって咲く

これはイングリッシュローズをはじめとする最近のシュラブローズには顕著に表れる傾向です。今やツルバラの代表ともいえるピエールドロンサールでさえ実はそうだったりしますから。高い上空に誘引された末端の枝に咲く花は一輪ずつ(もしくは2,3輪の房)なのに、株元に近いほうはフロリバンダ並みの大きな花房になって咲いている姿に心当たりがありません? 特に当庭ではロン様の植栽スペースに都合があるため、枝数を制限してるんです。だからあからさまに感じるのかもしれませんが・・・・
まぁ実際、バラ以外の新枝咲き樹木(ノリウツギとかサルスベリとか)なんかも冬季剪定でガッツガツ切り詰めちゃったほうが花房のボリュームは確実に大きくなりますしね。だったらバラだけが特殊な例外ってこともないだろう、というのがうちの考え方。

そうして兎も角、房に咲くということは、おのずと開花に時間差が生まれるということになります。なので、⇧の図で言うと、

誘引したほうは③の期間が満開。一方、カットして房咲にしたほうは③~④の期間が見頃。

もちろん一斉開花(満開状態)はそれはそれは見事な景観を作り出しますが、でも一斉開花を求めなくても、花期の只中にあるバラは充分に美しいです。それに全開だろうが7分咲だろうが見た目はあんま変わんない・・・ってか、花と緑のバランスからいって6~7分位のほうがむしろ美しいとさえ。
それに天候のこともありますしね。例えば儚げ系イングリッシュローズが満開を迎えた途端に大雨なんか降ったら・・・ゾッとする訳ですよ。

一瞬の歓喜に、努力のすべてを賭けてみる?
それとも出来るだけ長くゆっくり幸せに浸りたい?

但しこれはあくまで『切ってもOK、つるにも出来る』というタイプの房咲性シュラブローズ(特に中大輪)に関しての理屈。完全なツルバラとかオールドローズとか小輪系とかはモチロンこの限りではありません(旧枝一季咲き品種の枝を冬季剪定でバッサリやっちゃったら、そりゃ咲きませんて)そもそも房咲性でない品種(HT寄りのタイプ)はどうやったって房にはならないです。

またカットするにしても、どのくらいの長さ(高さ)でカットするかはホントその品種それぞれです。ブッシュローズ並に切り詰めなければ充分な花数が得られない品種もあれば、ツルバラ並に長く残した枝を横倒しもせず立てておいてもそこそこな房咲になる品種もあります。もちろん基本データとかヨソ様の栽培記録とかは参考にはなりますが、それがすべてそのまま自分ちの庭に当て嵌まるとはゼンゼン限りません。実際シュラブローズほど気候や風土と密接にリンクした生育をみせる樹木もそうそうないと感じていますし、だからこそ植えつけから数年間はお互い腹の探り合いをしなくちゃいけない訳で・・・・(笑)。でも庭主とバラっていうのは、そうやって時を掛けてようやく気心知れた間柄になっていくんだと思います。風土あるいは庭主が違えば、同じバラでも違う表情を魅せる。そう思って下されば。

(・・・ただ、念のため補足しますと、健康な枝を冬季剪定で適宜に(深めに)切り詰めるのと、凍害が出た枝を春先に大きく切り詰めるのとでは、まったく事情が違うことはお察し下さい。それから庭主の都合だけを優先して御本人を無視した強剪定を施した場合も同様。後述2つの場合は株そのものにダメージが及んでいるため、花数は当然少なくなります。それが自然の摂理かと。)

ともかく上記の理屈がある以上、『ツルはすべて横倒し或いはS字に誘引しなければならない』訳ではなく、少なくとも最近のシュラブローズをツルバラとして誘引するなら、枝振りに合わせた最低限のシンプル誘引&残りは適宜段カット。そういう手法も選択肢のひとつだっていう・・・・まぁ、そういう感じでご理解下さいませ。

※ただし繰り返しますが、上記や個別ページの記載は当庭での個人的所感です。特に暖地栽培の場合は事情が違うかもしれません。生育期が長くて、伸びた末端の枝先まで充分に充実するなら高く広く誘引しても房咲になれるのかも・・・・とりあえず直接的には当てはまらなくても、いつか何かの手掛かりになれば幸いです。