【自然樹形でバラを育てる】

ティストウの庭では、植栽しているバラを可能な限り自然樹形で咲かせています。
この場合の自然樹形とは『無剪定で放任栽培』という意味ではなく、『無理な誘引や不自然な支柱を立てず、品種本来の個性が充分に現れた樹形』のことです。
自然な枝振りや樹の佇まいを楽しみたいからこそ、冬季剪定は寧ろしっかり行っています。花後の切り戻しも然りです。

もちろん、“剪定した時点で自然樹形ではなくなる” という考え方もあるでしょうが、そこは “大自然に自生してる原種” ではなくあくまで “庭という人為的な空間で、人が栽培&鑑賞している園芸品種” としてのバラなので、庭主が適宜な剪定をするというのは或る意味自然というか大前提というか・・・・

・・・・ってそう考えると、うちが言ってる『自然樹形』とは『剪定樹形』なのかもしれませんが、でもそう言っちゃうと今度は何だか、バラを刈り込んで型に嵌めちゃってるイメージになりそうですし・・・・兎も角、百聞一見に如かずということで、⇩の感じが当庭のデフォ。200品種以上のガーデンローズ(株数だと300くらいかも)をこんな感じで育てています。

ラベンダー ラヴェンダー ドリーム Lavender Dream バラ

ところで一般的に。バラの樹形タイプといえば、『自立する木立はブッシュ、誘引が必要なものはツル、その中間がシュラブ(=半ツル)』と大きく3つに分類されていますよね。
まぁ、確かにそれはそうなんでしょうけど・・・・でも実際に栽培してみると気づく通り、自然樹形がブッシュ型にまとまるシュラブがあったり、シュラブと謳われているのに半ツル状の枝が伸びるタイプでなかったり、ブッシュなのに伸長力があってツルバラ扱いに出来たり出来なかったり・・・ホントに千差万別なんですよね。ましてやツルとされるバラの多くでさえ、実は誘引&サポートナシで自立出来るとなれば、もはや何が何だか・・・・

だったら、ブッシュとシュラブとツルのあきらかな違いとは何か。
そもそもなんで区別しなくちゃいけないのか。
これに関しては各方面の専門家が様々な視点に拠って解説なさっていますけれども、とりあえず当庭および当サイトでは庭作りの視点からガーデンローズをざっくり2つに大別して記述しています。

シュラブローズ=庭風景そのもの(骨格)を構成する存在
ブッシュローズ=植栽エリアのフォーカルポイントorアクセサリー

インテリアで例えるなら、シュラブローズはカーテンとかソファとか。対してブッシュローズはちょっとしたオブジェとかクッションとか額絵のような・・・いわば雑貨的なもの。

要するにうちが言ってるシュラブローズっていうのは、アジサイだのツツジだのウツギだのと同じ、花咲く灌木(=シュラブ)のことなんです。これらの灌木は花期はもとより、花の無い時期でも『適宜に茂った庭木』として、庭の中で安定した存在感を維持します。
対してブッシュローズはむしろ草花に近い存在。彩りというか、庭をより美しく見せるための装飾というか。もちろんブッシュローズだって花後でも緑ではあり続けるでしょうが、樹全体のボリュームは明らかに小さくなるので庭風景を構成する程の存在感はなくなります。

但しこれはあくまで、当庭と当サイト内での区別の仕方。
とはいえ一般的な『樹姿や系統による分類』の結果とも左程齟齬はしませんので、ふんわりザックリ、とりあえずそう捉えておけば庭作りがとってもしやすくなることは確かです。
例えばブッシュローズだけを沢山並べて植えても単なる花壇しかならない。庭風景(いわゆるガーデンと言い換えても)を作ろうとするなら、様々な枝振りを持つ灌木(=シュラブ)が絶対的に必要となる・・・そういうコトです。
もちろん小型シュラブでは風景を作り切れないでしょうし、大型ブッシュは風景の一部になるかもしれません。ですがいざ庭作りを始めてバラを選ぼうとした時には、ケッコー役に立つ指針になると思います。
(・・・・あー・・・でも補記しておくと、上記のザックリ区分が通用するのは主に国外品種です。国内作出のおしゃれなバラは作出者の感性とかブランドの考え方とかが色濃く反映されていることが多いので、その場合は迷わずそちらを優先して下さい。その品種に最も適した育て方や楽しみ方が事細かに提案されている筈です。)

『・・・って、ちょっと待て。だったらツルはドコいった?』

はい。モチロン当庭にも誘引して咲かせているツルバラはあります。それに関しては『シュラブだけどツルバラ扱いが妥当』だとか『自立した自然樹形が作れないので誘引が必要』とか、個別ページに記載しています。ただ、前述した通り当庭では殆どのバラを自立させていて、誘引はあくまで補助的なもの、或いは庭主側の都合(…笑)と考えてますので、そういう庭でのレポートとしてご理解下さい。
実際の話、ラベルに『ツル』表記されていても、誘引が絶対に必要な品種だとは限らないんです。伸長力があるシュラブ或いはブッシュを流通上解かり易く簡潔に『ツルバラ』とだけ表記している事も多いので。うちの場合はそういう品種は迷わず自立させてる・・・と、まぁ、そんな訳です。

また個別ページでは、ブッシュとシュラブそれぞれをそのサイズ感によってさらに3段階で記載しました。もちろん栽培環境あるいは剪定or誘引によっては、もっと大型化するものやもっとコンパクトに育てられるものもあるでしょうが、とりあず当庭においてその品種が自立した状態で最も自然に収まるor見映えのよいサイズということでご理解下さい。特に寒冷地栽培の方にとってはうちの生育状況が何かしらの参考になるのではないかと思い、出来るだけ明記しました。但し各寸法に工業製品のような正確さは求めないで下さいね? あくまで大体です。

【樹形&サイズ別の分類】

ブッシュ・・・主軸となる株元の幹数が少なく、花は春から新しくのびた枝の上部に集中し、開花時の樹姿が花束の形になる木立バラ。
標準的サイズとして、樹高80~140㎝くらい。
鉢栽培しやすそうなサイズ感。
一般的なHT(ハイブリッド)やFL(フロリバンダ)がこれにあたる。

小型ブッシュ・・・・樹高70㎝以下の木立バラ
草花と混植すると埋もれちゃうようなコ。パティオローズと呼ぶことも。
鉢植えに向くが、庭植えするなら植栽エリアの最前列で、且つ午前中の日照を充分に確保出来るよう配慮する。(午後の日照はノーカウント)
そもそもが低性品種の他に、寒冷地では大きくなれないものも含まれる。


大型ブッシュ
・・・樹高140㎝以上の木立バラ
枝がよく伸びて樹丈が高くなるブッシュ。場合によってはサポートが必要なこともあるが、主幹(⇦図の茶色の部分。葉が茂らない株元近くの主軸となる幹)を出来るだけ低く仕立てると自立しやすく、見映えもよい。寒冷地では余り伸びないクライミング(ツルバラ)も含まれる。


シュラブ・・・主軸となる株元の幹数が多く、自然樹形ではこんもりと茂り、株全体で花が咲くもの。
標準的サイズとして、樹高100~140㎝・横幅100~120㎝位。
ブッシュ樹形に近いもの、ブッシュ・ツルどちらの扱いでもOKなものが混在する。詳細は個別ページにて。


大型シュラブ・・・樹高140以上もしくは横幅100以上。
さらに特大(樹高200以上もしくは横幅150以上)シュラブもあるので、詳細は個別ページにて。
主幹が長くなりすぎると(腰高)自分の枝の重さで自立しきれなくなるので、冬季剪定では出来るだけ低く仕立てるのが理想。(但しツルバラとして誘引する場合とかキャスケード仕立ての場合は適宜)


小型シュラブ
・・・樹高70㎝以下。
こんもり茂るタイプやグラウンドカバー状になるものがある。
主に植栽エリア前列に配されることが多いが、枝が横に張り出してくるので注意する。

 

いろんなタイプのシュラブローズ(画像クリックで個別ページへGo)
  

アイスバーグ つる Iceberg Cl   

バラ アロハ Aloha  

  

  

【枝振りによる樹形の違い】

コンパクトな品種ではさほど大きな問題にはなりませんが、大型種になればなるほど重要な案件になります。自然樹形で育てる場合は勿論ですが、ツルとして誘引する場合にしても、その品種特有の枝振りを把握しているといないのでは、コスパ(作業量と見映えの比率)がゼンゼン違ってきます。

一番単純な見極め方は、株元から伸びてくるベーサルシュートがどんな角度で伸びるか。もちろん幹や枝の途中から出て来るシュートもこれに準じていて、この角度は各品種個有のものです。花房をつくる茎の枝分かれですら同一。これによって樹全体に各品種の個性が現れます。
※たまにベーサルシュート自体は真上に向かってグングン伸びるのに、最終的には横張になるのもあります。(多くは枝質がかなりしなやかな特性である為に、直立性なシュートを伸ばしてもそのうち自然と斜めに傾いでいって、結果、横張な樹姿になる品種。個別ページにはその場合横張性と記載してます)とりあえず『直立性品種のシュートは確実に真上に向かって伸びる。対して横張性品種のシュートは横だろうが上だろうがお構いなしに伸びる』そんな感じでお考え下さい。

直立性・・・・ベーサルシュートがほぼまっすぐ上に向かって伸びる
半直立性・・・少し斜め方向になるが概ね上に向かって伸びる
横張性・・・・ベーサルシュートが地面に対して45°以下の角度で四方八方に伸びる
半横張性・・・横張性程ではないが明らかに斜めな角度で四方八方に伸びる

 

⇦横張性ブッシュと直立性ブッシュの、開花時のイメージ。
横張性シュラブと直立性シュラブもこれに準じてイメージできます。

ブッシュにしろシュラブにしろ、直立性や半直立性の品種は比較的横幅を取らないため、かなりの大型種でもわりと扱いやすいです。ピエールドロンサールがその代表品種。もちろん直立性や半直立性の品種であっても、よく茂ればそれなりに横幅も出ますし、大型種の枝が上空で大きく開帳すれば横張に感じることはあるかと思います。
一方、横張性や半横張性の品種はちとクセモノですね。枝が暴れやすいとか言われるのは大抵このタイプ。(もちろん横張性品種すべてが暴れる訳ではありません)とはいえ適宜なスペースさえ確保出来るなら、開花時は見応えある株姿を楽しむことが出来るのも特徴。ですから比較的大きなお庭で奮闘なさってるガーデナーにとっては、とっても頼もしいパートナーになってくれるタイプです。ぜひ味方について貰って下さい♪

【その他、個別ページによくある樹に関する表現】

成株(成木)・・・大苗で植えつけて数年以上経ち、品種の特性がハッキリ出ているもの。個別ページ記載のデータ&所感は、基本的に成株(成木)のものです。それ以下のものは若株とか幼苗とかとして補記しています。

キャスケード・・・・大型シュラブの自然樹形のひとつ。
ある程度の高さまで自立して、そこから先は長く伸びた枝が弧を描き(アーチング)噴水みたいに見える樹形。もしくはそれを狙った仕立て。
開花時の重みで倒れたり潰れたりしないように主幹をサポートしておくだけで、つる状の枝が自然にしなだれ優雅な樹形を作ります。但しこの仕立て方はそういう性質を持った品種限定。自然樹形がキャスケードにならないコには別の生き方を提案するのが当庭の流儀。

  DSCF1254

仕立て直し・・・株元の葉の茂らない幹の部分が高くなりすぎて(腰高)美観を損ねたり、自立するには不安定になったりした時、主幹を手頃な高さまでガッツリ切り戻すこと。必ず休眠期に行います。その場合、切り戻す主幹に芽が無くても大丈夫。御本人がちゃんと自分でイイトコ探して芽吹きます。もし芽吹かなかったら、その幹が古過ぎて既に寿命だったと思いましょう。その場合でも代替えシュートは何処からか必ず出ます。(・・・勿論未だにドキドキはしますが、とりあえずそれで芽吹かなかった株は今まで只のひとつもありませんので)

まとまりがいい・・・株全体の枝が平均的に伸びて、且つよく茂り、冬季剪定さえしておけば余計な支柱に頼ることなく、適宜なこんもり樹形(もしくは密にギュッと引き締まった花束型)を形成するタイプ

奔放・・・横張気味の枝がまばらだったり、一部だけが極端に伸びたりして、こんもり樹形にはなりにくいタイプ。また、横張気味な上に花茎が長くて花期に樹形が騒ぐタイプ⇩を指していることもあります。

(奔放な枝振りの実例)大型・半横張性シュラブ  ‘ウィリアム モリス’

枝が固い・・・・・枝がしならず、誘引しようにも融通が利き難い。

枝がしなやか・・・枝がしなり誘引もしやすいが、花期に樹形が潰れやすい。

太枝性・・・幹や枝がシュートの段階から既に逞しいコ。逆に『逞しい枝振り』とあったら太枝性。

細枝性・・・幹や枝が繊細なコ。自立出来るのと自立出来ないものがあります。

※尚、⇧は各品種の個性です。品種の強健さには関係ありません。モチロン日陰など生育に問題があって枝がひ弱になったりしてるのはまた別のお話。

その他の用語は、基本的なバラ栽培マニュアルに準じます。
また、個別ページの記載はあくまで当方の所感です。品種選びや育て方の手掛かりになればと思って出来るだけ詳しくレポートしましたが、厳密なデータではありませんので御了承下さい。あくまで『寒冷地での栽培実例のひとつ』として、何かしらの参考になさって頂ければ幸いです。