雪の少ない寒冷地&凍風荒ぶる地方の皆様へ

ところで皆様のお庭では、冬支度はもうお済みでしょうか?
うちは・・・ボチボチ。バラに関しては寒肥を施して、仮剪定やら仮誘引やらが大体終わって(ちゃんとするのは早春。ソメイヨシノが咲く前までに)漸くひと段落。
  「・・・え? 寒冷地の庭なんだから、当然、雪囲いはしてるでしょ!?」
ハハハハハハ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ・・・・・基本的にはしてません。勇者と呼んで(笑)?

庭のプロフィールでもお話していますが、当地は青森県十和田市。
ハーディネス ゾーン ナンバーでいえば7a。
なので国内でみれば確かに寒冷地には寒冷地なんでしょうが、でもターシャの庭と同等クラスの極寒地ガーデナーの皆様に向かっては「うちも寒冷地ですけど庭やってるんですよー!お互い大変ですよねーww」なんて、口が裂けても絶対言えない・・・そんなトコ。
現に20年前この庭を造り始めようとした時、文字通りの初心者ガーデナーだった私は、

「あー・・・・まぁ確かにココは北国には違いないけど、言うほど雪降んないんだよねー。実際ご近所で雪囲いしてるトコなんて見た事ないし・・・・それでも庭にバラ咲かせてるおうちならいっぱいあるし、本にも『基本的にバラは寒さに強い植物です』って書いてあったから、きっとフツーに大丈夫ってコトなんじゃない? そりゃ特別『寒さに弱い』って但し書きされてる品種はムリかもしんないけど、そんなん殆ど書いてないもんねー・・・・・って、そんなことより見て!この雑誌に載ってるこのバラすっごい綺麗~~~!チョー好みぃ~♪ あ、こっちは有名ブランドの最新品種だって!いやぁ~ん、みんな素敵ぃ~みんな欲しいぃ~~~~♡」

とかゆー感じでした。
・・・・・・・・・・・・・・・張っ倒してやりたい(笑)。
でも実際の話、一般的なバラ栽培マニュアルにおいて【寒冷地】は、大抵そのたった一言によって括られていますので。そして『特に豪雪地帯ではしっかりと雪囲いを・・・』云々。だったら雪の少ない地域では必要ないかと思うじゃないですか。いわゆる豪雪地帯の大変さを横目で見て知ってるだけに尚更ね。

けれども・・・・・・庭木がすっぽり雪に埋もれる豪雪地帯にお住まいの方々に大変な御苦労があるように、息も出来ないような暴風に、剥き出しのまま一冬吹きっ晒される地域にもそれ相当なキツさがあるんです。
前述のような感じだった私さえ今となっては、「少しくらい積もってくれたほうがバラ的にはまだマシなんだけど・・・」とか内心こっそり思ってる始末。(あくまでこっそりです。いっぱい降るトコの人に聞こえたらゼッタイ絶対っ!チョー怒られるから。それにココだってそれなりにはネ。なにしろ青森県ですもん)もしくはこの庭がこんな田圃ごしの吹きっ晒しじゃなく市街地or住宅街にあればきっといくらかマシだったんじゃないか、とか・・・・
いやいやいや、沿岸地域の場合はこんなもんじゃないですよね。潮粒まじりの暴風雪に横殴りーーーッ!なんて・・・お客様とガーデニング談義をしてて、聞いて思わず「ヒィーーーッ!?」と震え上がった覚えがあります。

そもそも先述したハーディネスゾーンナンバーというのは、最低気温と標高による計算。積雪量と風当たりの強さは勘定に入っていません。「それってそんなに重要なこと?」と思われるかもしれませんが・・・・青森県内で言うと、津軽と南部の冬事情を一緒くたに語ったら全方位から総攻撃食らうって話ですヨ(笑)。要するにハーディネスゾーンナンバーとはあくまで目安。その程度で捉えるなら知っておくとやっぱ便利だよ?というのが私の体感。そういうことです。(ネットで簡単に調べられます)

改めて言いますけれど、私はガーデニングやバラに関して専門的に何処かで、或いはどなたかに師事して学んだ者ではないので、うちの庭とうちで育てているバラのことしか知りません。しかも未だに試行錯誤と数々の失敗に喘いでいるぐらいなので『寒冷地ガーデナーはこうするべき!』なんて確たる解答を持っている訳でもありません。
それでも・・・・20年前の自分に言ってやりたいことなら山ほどあります。そしてこの庭の中で、どんなに短くとも数年以上育てた品種に対してはそれぞれにいろいろ思うトコロもある訳です。
勿論あくまで寒冷地でのバラ栽培経験談のひとつにすぎませんが、過酷な環境下で日々闘い続ける寒冷地ガーデナーの皆様に、少しでも何かのお役に立てて頂けたらと思い、⇩をまとめてみました。ご自分の庭やお育てのバラの状況と照らし合わせて、ちょっとでもピン!とくるものがございましたら僥倖です。

・・・・・って、えぇ~と・・・・・・但し、⇩はあくまで2021年の記録です。それ以前に凍害で既に亡くした品種は含まれておりません。もしかしたらそれらの品種名もお知りになりたい方がいらっしゃるかとは思いましたが(私だったら知りたい)それらまで言及し出すと、「そもそもに耐寒性の低い品種を寒冷地で露地植えしちゃダメでしょ!しかも冬囲いしないってどんだけ!?」ってゆー根本的なお叱りに項垂れるしか出来なくなっちゃうので・・・・・更に言えば当方、皆様に軽ぅ~くヒかれる程度には数多くのバラ(いえバラだけじゃなく。樹も草花も数えきれない程)をダメにしておりまして、それらを目の前に列挙するのは我ながらやっぱツライ。。。それでもココ数年間のコトであれば個別ページは残してますので(庭づくり初期の頃のはさすがに無いです)気になる品種がございましたらそちらにてご確認下さいましな。

 

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厳冬を越えた年の、ティストウの庭の記録簿

◆まずはじめに。2021年の春、庭がどんな状況だったか
【闘う庭。あるいは庭の底力について】
ティストウの庭のブログ  2021/5/8

◆凍害のため、余儀なく撤収せざるをえなかった品種
モッコウバラ(原種/中国)
ザ マッカートニー ローズ(フランス)
アンドレル ノートル(フランス)
ダイアナ プリンセス オブ ウェールズ(アメリカ)
プリンセスマーガレット(フランス)
ラブ(アメリカ)
サイレントラブ(日本)
ユリイカ(ドイツ)
フレンチレース(フランス)

HTに関しては⇧以外の品種も総じて厳しかったです(中にはまったく全然ヘッチャラリンなコもいましたけど) あくまで私感としてですが・・・うちにピースがあったらダメだったんじゃないかと思ってます。

◆いつもどこかしら耐寒性に不安を感じてて、案の定ハデにやらかした品種
ゴールドバニー(フランス)
カクテル(フランス)
サラバンド(フランス)
マスケラード(フランス)
フリュイテ(フランス)

メイアン作出のフロリバンダばかり並びましたが、メイアンの品種が殊更耐寒性に欠けるということではありません。うちで最も信頼されてるバラ及び最強認定されてるバラもメイアンです。とはいえ・・・・・総じてフレンチローズの場合、当庭においては耐寒性が足りない品種がわりとケッコーちょいちょい見受けられるのは事実。一般的に強健種とされてる品種であっても耐寒性はまた別のお話。デルバールとギヨーに関しては、私が寒冷地ガーデナーとして物心つき始めた頃からの(笑)流通なこともあり、今現在うちの庭にはそもそも少ないです。それでもいくつかあることはあるんで詳細は個別ページにて。

◆今まで殆ど心配してなかったのに、思いがけなくダメージが顕著だった品種
スパニッシュビューティー(イタリア)
グラースアンアーヘン(ドイツ)
ジャルダンドフランス(フランス)
ローズうらら(日本)
琴音(日本)
タイガーアイズ(イギリス)

各品種の事情は個別ページにて。その他にも多々細々ありましたが春に樹の状態を見て、庭主が暫し凍り付いたものだけを⇧に挙げました。逆に⇩は・・・・

◆厳冬?何それ美味しかった?ってな品種群
イングリッシュローズ・・・無敗。多少の優劣はありましたが通常運転とは斯くの如き。
近年作出のコルデス・・・まったくもって余裕綽々。むしろやる気満々。但しユリイカのみ敗退・・・でもコレそういうことだったのかとチョー納得してるんで詳細はそちらにて。あと、古い時代のヤツは他社のバラとそんな変わんないって印象。

ちなみに余談としてですが、イングリッシュローズに関しては、当庭では関東以西のデータよりイギリス本国の栽培データ(樹高など)が参考になります。巷でよく見受けられる『(日本)国内では…』って文言は、ほぼ間違いなく前者。私はこれに気づくまで相当ムダに悩ませられました。。。
それからついでなんでもうひとつ。うちは冬囲いとしてのマルチングも殆どやってないんですけれど、苗を植え付ける時点で、接ぎ目部分を埋める程度の深植えにしてることはあります。これは直訳されたイングリッシュローズのハンドブックにあったやり方。(多分そうだったと思うんだけど・・・気になる方はご確認を) はじめの頃は意味解んなくて一般的なマニュアル通りに浅植えしてたんですが、近所の農家の御婆ちゃんが通りすがりにそれ見て「…おい。そったら植え方だば凍み上がるべ」って。それで嗚呼ナルホド…と思った次第。ちなみにその婆ちゃんは私がその時植えてたのがバラ苗かどうかはさほど気にしてなかったデス(笑)。冬季に地面が凍結する庭、もしくは強い霜が降りる地域の方は是非ご一考を。

また、コルデスの本拠地ってうちよりずっと寒い上に、塩害もある地域だそうで。そういうトコロで作出されたバラだから、うちの庭でも余裕綽々で咲いてくれるんだな・・・・って、考えてみれば当然か。私が育種家だとしても、うちの庭で最もすこやかな樹を持つバラを母親に、最も美しい花を咲かせるバラを父親に選びますもんね。すればおのずとそうなるか(そうそう単純じゃないのは100も承知で)
但しそういう訳なんで、うちの庭ではコルデスのバラはドイツ本国の栽培データより若干大型化してるみたい。だからきっと暖地ではもっと伸びるんでしょう。なので日本国内で流通しているコルデスのバラにはよく『ツルバラ』ってタグがついてます。が、そういう事情で『ツルバラ』表示されてる場合(他社のバラもそう)うちの庭では、『確かに大型化するけどツルバラって感じでもない』っていうのが基本パターン。(だって実際ガッツリ自立したシュラブに育ちます) ま、この辺のことを語りだすと非っ常ぉ~~~~に長くなるんで、各個別ページにある文章と画像を照らし合わせた上で御推察下さい。もしくは実際にうちにいらっしゃってご覧になって頂くのが一番手っ取り早いんですけど(笑)。

◆そしてその後、どうなったか。(2021年を振り返って)
ざっくりまとめてしまえば、だいたい大丈夫でした(笑)。少なくともハイシーズンにいらっしゃったお客様は春の惨状なんてほぼほぼ気づいてないと思うくらいには。庭主目線で言えば、確かに1番花が咲き始めた時点ではまだまだ厳冬の差し響きがそこかしこに見受けられましたが、その後はモリモリと盛り返して、バラ期が終わる頃にはほぼいつも通り。むしろ秋なんて過去イチだったかもしんない(笑)。
まぁ、もう少し具体的に言うと、先述の春先のブログ記事でも書いてますが、どんな時でも信頼できるシュラブローズの存在はホント大きかったってことかな。改めて痛感しています。シュラブローズを含めた多くの灌木や樹々が描き出す景観がいつも通りに美しかったおかげで、足元で小さく蹲ってるブッシュローズがひとつふたつあっても然程気にならなかったのは事実ですから。これ、言い方を変えると、『いつも安定して本気の美しさを魅せてくれてるバラは、思いがけない非常時にも真価を発揮してくれる』ということ。常日頃ムリをさせてるコ程、厳しかった。これは風土面のこともあるし、栽培方法に絡んだ株のコンディション的なこともある。後者に関しては反省あるのみ。これもまた庭からの改善要求事案。
・・・・かわいいでしょww これも春先のブログで書いてた厳冬由来のDIYのひとつ。ネットで見かけて思わず型紙からおこした本格仕様。さすがにボタンホールを刺繍糸でステッチしてる時は「……あたし、一体何やってんだ?」って思いましたけど、ジョークグッズ的なものにムダな本気を投入するのが私の流儀なので(笑)。2021年はこのテのアレヤコレヤの楽しみを思い出させてもらったシーズンでもありました。

 

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と、まあ、こういう感じが酷冬越えの記録です。
なんかお役に立ちそうなネタありました? 何かしらひとつでもあれば長々書いた甲斐があるんですけど。特に、これからバラを始めようとなさってる皆様。あるいは始めたばかりのガーデナー様に『寒冷地だからって殊更悲観したり、身構えてハナから諦めたりしなくても大丈夫ですよー?』ってコトをお伝えしたかったんです。寒冷地でこそ真価を発揮するバラはきっと想像なさってる以上に沢山ありますし、頼もしい味方となってくれるローズメーカーやナーサリーも沢山あります。雑誌や写真集、あるいは何処かのガーデニングショウで見かけたまんまの庭は作れなくても、自分の住まう地域の風土に根差した、世界一自分好みの庭は作れます。【ティストウの庭】もそういう庭ですから。という訳で皆様。どうぞどうぞ張り切ってバラを植えて下さいませませww
そしていつか寒冷地&初心者ガーデナーあるある案件で思いっきり盛り上がりましょう!
御来訪を、心よりお待ちしております♪

 

って、折角ですからここまでお付き合いくださった皆様へ、おまけのプチ情報を。
春になるとどこのHCにもバラ苗がずら~~~~っと沢山並びますよね。なかには開花株やネットで売り切れの最新品種も思いがけずあったりして、私自身すっごくワクワクして品定めしてたりします。でもちょっと・・・お待ちになって? そのバラ、耐寒性は大丈夫? その地域の露地でそのバラが越冬出来るか否かは、おそらく一切選別されていません。うちで明らかな凍害によって亡くなったバラ達と、店頭にてごくごくフツーに再会します。あるいは『寒冷地でのバラ栽培は冬囲いして下さい。心配な場合は掘り上げて鉢で管理しましょう』前提で売られているのかもしれません。規範通りの栽培法を正しく実践している方なら問題ないのかもしれませんが、「冬囲いだぁ~?ヘタにそんなんしたら却ってモロトモで吹っ飛ばされんじゃん!」ってな地域にお住まいの場合は、どうぞくれぐれもお気をつけ下さいましな。

・・・・あれ?でもこれ、きっとものすごぉ~く大事なコトなんで、改めて声を大にして。
うちと同様に雪の少ない寒冷地、もしくは凍風荒ぶる地方のガーデナーの皆様へ。

ラスボスは雪じゃなく、乾燥しきった冬季の凶風らしいぞ!?

お心当たりのある方は是非ご一考を。
・・・って、またオチに使っちゃった(笑)。でも結局そういうこと。北国の海岸に逞しく自生するハマナスの樹高はせいぜい1M止まり。場合によっては5-60㎝で這い広がっていることも。それがうちの庭ではほっとくと180 ㎝くらいになりますから。